最初に決める ― 自由診療だけか、保険も扱うか
電子カルテの一覧を開く前に、自院で先に決めることがあります。自由診療だけでやるのか、保険診療も一部行うのか。ここで、見るべき製品の種類が変わります。
自由診療だけなら、診療報酬の請求(レセプト)は発生しません。レセコンとの連携は必須ではなくなり、同意・写真・コース管理を優先軸にできます。保険も扱うなら、レセプト連携が要件に加わり、一般の電子カルテの土俵で比べることになります。まずここを1行で決めてください。
| 自院のタイプ | 優先する軸 |
|---|---|
| 自由診療のみ | 同意書・施術前後写真・コース物販管理。レセコン連携は不要 |
| 自由診療+一部保険 | 上記に加えて、レセコン連携・保険診療の記録要件も条件にする |
自院がどちらかで、候補の入口が変わる。ここからは「自由診療のみ/メイン」を前提に軸を出す。
保険診療カルテとの違いを軸にする
一般の電子カルテは、保険診療を前提に作られているものが多くあります。診療報酬の請求に合わせた記録が中心で、同意書や施術前後の写真、コースの消化管理は、後付けか、扱いが弱いことがあります。自由診療メインの自院では、ここが逆になります。
| 観点 | 保険診療カルテ | 自由診療カルテ |
|---|---|---|
| 記録の中心 | 診療報酬の請求に合わせた記録 | 同意・施術前後写真・コースと物販 |
| 同意 | 必要な範囲で取得 | 施術ごとに同意書を取り、記録に残すことが多い |
| 写真 | 必須ではない | ビフォーアフターの比較が判断材料になる |
| 会計 | レセプトと連動 | 自由価格・コース・物販。回数券の消化管理が要る |
残すものが違うため、保険診療向けの強みがそのまま自院の決め手にはならない。同意・写真・コースの3つで見る。
この3つの違いを、次から1つずつ軸にして、製品の見方に落とします。
軸1 ― 同意書を記録に残せるか
自由診療では、施術の内容・費用・主なリスクを説明し、同意を得てから施術に入る流れが基本です。この同意を、カルテと別の紙でなく、同じ記録の中に残せるかが軸になります。
- 施術ごとに同意書を作り、患者の記録にひも付けて保存できるか
- 説明した内容・費用・リスクを、同意の記録として残せるか
- 同意の取得日や、誰が説明したかが分かる形で残るか
- カウンセリングの記録から同意、施術記録までを、ひとつの流れでたどれるか
同意とカルテが別々の紙だと、後から「この施術に同意があったか」を探すのに手間がかかります。コース契約のある自由診療では、契約・同意・施術の記録を同じ流れに乗せられると、現場の確認が一度で済みます。契約書面そのものの作り方は、別記事で扱っています。
コース契約の概要書面・契約書面については「美容医療・エステの特定商取引法 ― 概要書面・契約書面の作り方」で扱っています。同意と契約の書面は、同じお客さまの記録としてつながります。
軸2 ― 施術前後の写真を比較で残せるか
自由診療は、効果を写真で確かめる場面が多くあります。施術前後の比較は、医師の判断材料にも、患者への説明にも使われます。写真で見るのは次の点です。
- 施術前と後を、同じ角度・条件で並べて見られるか
- 部位ごと、施術ごとに写真を整理して残せるか
- 写真に手書きで印やメモを入れられるか
- 保存できる枚数・容量に上限はないか、超えたときどうなるか
施術前後の写真は、患者の顔や体が写る個人情報です。誰が見られるかを役割で分け、持ち出しや流出を防ぐ運用が要ります。アクセスの範囲を分け、操作の記録が残る製品を選んでください。写真を広告に使う場合は、次の章の医療広告の扱いに進みます。
軸3 ― コース・物販を消化まで管理できるか
自由診療は、1回ごとの会計だけでなく、複数回のコースや回数券、化粧品などの物販が混ざります。ここを電子カルテ側で管理できると、数え違いや取り逃しが減ります。
| 管理する対象 | 確認すること |
|---|---|
| コース・回数券 | 残り回数を記録できるか。来院ごとに消化が反映されるか |
| 物販 | 化粧品やホームケアの購入履歴を、患者ごとに残せるか |
| 未消化の把握 | 使い切っていないコースを持つ患者を、一覧で見られるか |
| 次回の提案 | 履歴から、次に勧める施術・物販を判断できる記録になっているか |
コースの残り回数と物販の履歴がカルテに乗ると、会計と提案が記録でつながる。
コースや回数券の消化を仕組みで管理する考え方は、サロン全般で共通します。残り回数の把握と来院の促し方は、別記事でも整理しています。
個人情報と医療広告 ― 写真の扱い
自由診療カルテには、医療情報が詰まります。守り方を2つ、押さえます。1つは個人情報の安全管理、もう1つは医療広告の規制です。
個人情報の安全管理
患者の連絡先・施術歴・写真は、守るべき個人情報です。個人情報を扱う事業者には、安全管理の措置が求められます。役割ごとにアクセスを分け、誰が見たかを記録に残し、退職者のアカウントをすぐ止められること。これらは、電子カルテを選ぶときの確認点になります。
医療広告 ― 写真をそのまま広告に使わない
カルテに残した施術前後の写真を、そのまま広告に流用しないでください。医療広告には規制があります。厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、施術前後の写真(ビフォーアフター)を広告に用いる場合、治療内容・費用・主なリスクや副作用などの詳細な説明をあわせて示すことが求められます。本人の同意なく患者の情報を広告に使うこともできません。
- 広告に写真を使う前提なら、広告利用への同意を別に取る
- 写真には、治療内容・費用・主なリスクの説明をあわせて示す
- 体験談など、規制で扱いに注意が要る表現は、ガイドラインを確認してから出す
医療広告の具体的な可否は、厚生労働省の医療広告ガイドラインで定められています。出典に挙げています。広告に使うかどうかで、カルテの写真に取る同意の範囲が変わります。
自院の段取り ― 要件シートで比べる
製品の比較表を開く前に、自院の要件シートを1枚作ります。自由診療メインの自院では、見る軸が一般のクリニックと違うため、これがないと比較がずれます。
- 診療の型を決める:自由診療だけか、保険も扱うか。レセコン連携が要るかをここで確定する。
- 同意の流れを書く:いま紙で取っている同意書を、どの施術で取っているか書き出す。電子で同じ流れに乗るかを確かめる。
- 写真とコースを書く:施術前後の写真の運用と、コース・回数券・物販の管理を書き出す。
- 守り方を確かめる:個人情報のアクセス分けと操作の記録、写真を広告に使うなら同意とガイドライン対応を確認する。
- 自院が自由診療だけか、保険も扱うかを1行で決めたか
- 同意書をカルテと同じ流れで残せるかを聞いたか
- 施術前後の写真を比較で残せ、容量上限を確かめたか
- コース・回数券の残り回数と物販履歴を管理できるか聞いたか
- 個人情報のアクセス分けと、写真の広告利用への同意を確かめたか
自由診療のカルテ選びは、製品の機能数でなく、自院の同意・写真・コースの流れに合うかで決まります。要件シートを1枚作れば、どの製品にも同じ質問ができ、自院に合う1つが見えてきます。