製品名から見るから選べない

「サロン カルテ 電子化 比較」で検索して、製品の一覧ページを開いて、また閉じる。これを何度かやって、まだ決まっていない。製品が多くて選べないのは、見る順番が逆だからです。製品名から入ると、どれも「写真が残せます」「予約とつながります」と書いてあって、差が見えません。

選べる人は、製品でなく自店の条件から見ます。いまの予約は何を使っているか、施術写真は要るか、スタッフに見せたくない情報はあるか。条件を先に決めると、製品の半分はその時点で外れます。その条件を決めるための6つの軸を、順に出します。

これで何が決まるか
① 予約・会計連携来店ごとの二重入力が消えるか、残るか
② 施術写真ビフォーアフターを記録に残せるか、上限はあるか
③ 権限スタッフごとに見せる範囲を分けられるか
④ データ移行紙からの移し替え、解約時の持ち出しができるか
⑤ 料金体系月額のほか、人数・容量・店舗数でいくら増えるか
⑥ サポート導入後、スタッフが使えるまで誰が支えるか

この6つを自店の条件と突き合わせる。製品名は最後でいい。

軸1・2 ― 予約会計との連携と、施術写真

最初の意思決定は、いまの予約・会計を変えるかどうかです。ここを決めないと、製品が絞れません。

軸1 ― 予約・会計との連携

カルテだけ別のシステムにすると、来店のたびに名前・連絡先・メニューを2回入れることになります。予約システムにカルテ機能が付いているもの、いまの予約・POSと外部連携できるもの、カルテ単体のもの。この3タイプで、二重入力の量が変わります。確かめる順番はこうです。

多くのサロンは、ここで「予約システムに付いているカルテで足りる」か「写真や権限のために専用カルテが要る」かが分かれます。写真をしっかり残したいなら、次の軸2で判断します。

軸2 ― 施術写真

エステ・美容室・ネイル・まつエクは、言葉より写真で残るものが多い。肌の状態、カラーの履歴、ネイルのデザイン。写真で見るところを、製品ごとに確かめます。

写真は「容量上限」で後から効いてくる

写真は1枚1枚は軽くても、毎日撮ると数年で大きくなります。月額に含まれる容量と、超えたときの扱い(追加料金か、自動削除か)を、入れる前に必ず聞いてください。料金体系(軸5)と直結します。

軸3・4 ― 権限と、データ移行

軸3 ― 権限(見せる範囲を分けられるか)

カルテには、肌や体の状態、連絡先、購入履歴など、守るべき個人情報が並びます。全スタッフが全部を見られる状態は、便利な反面、漏えいの口になります。権限で見るのは次の点です。

個人情報を扱う事業者には、安全管理の措置が求められます。アクセスの範囲を分け、操作の記録を残す仕組みは、その備えになります。詳しくは個人情報保護委員会の資料を出典に挙げています。

軸4 ― データ移行(入口と出口の両方)

移行は、紙から入れる「入口」だけを見がちですが、解約時にデータを持ち出せる「出口」も同じくらい大事です。出口が無いと、合わなくても乗り換えられません。

「出口」を聞かないと、抜けられなくなる

入れるときは丁寧でも、解約時のデータ持ち出しに別料金がかかる、または写真は出せない、という製品もあります。契約前に「やめるとき、データはどう返してもらえますか」を必ず聞いてください。聞きにくいですが、ここで店の記録の所有権が決まります。

軸5・6 ― 料金体系と、サポート

軸5 ― 料金体系(月額の数字だけで決めない)

月額を比べて安いほうに決めると、後で増えます。料金は、月額にどこまで含まれ、何で加算されるかを見ます。

見る項目聞くこと
初期費用導入時に一度かかる費用はいくらか。データ移行は別か
人数・店舗で加算スタッフ数や店舗数が増えると月額が上がるか
写真の容量月額に含まれる容量。超えたら追加料金か、削除か
解約・持ち出し最低契約期間はあるか。解約時のデータ返却に費用はかかるか

月額が安くても、人数や容量で加算されると、年でみて逆転することがある。自店の人数・店舗数を入れて1年分で比べる。

比べ方は、月額×12に、初期費用と、自店の人数・店舗での加算を足した「1年の合計」で並べます。月額単体の数字では、規模によって順位が変わります。

軸6 ― サポート(入れてから使えるまで)

道具は、スタッフが使えて初めて役に立ちます。導入の前後で、誰がどう支えてくれるかを見ます。

6軸で候補を2〜3に絞る使い方

6つの軸が出そろったら、絞り方は2段階です。まず「必須」で外し、次に「比べる」で順位をつけます。

  1. 必須を3つ決める:6軸のうち、これが無いと自店では無理、という条件を3つに絞る(例:いまの予約と連携/写真の上限なし/解約時に持ち出せる)。
  2. 必須で外す:候補のうち、3つの必須を満たさないものを外す。たいてい半分以下に減る。
  3. 残りを比べる:残った2〜4製品を、1年の合計費用とサポートで並べる。
  4. 試して決める:無料期間があるものは、自店のスタッフが1週間触ってから決める。
必須条件を決める前に確かめること
  • いま使っている予約システム・会計(POS)の正式名称を書き出したか
  • 施術写真を残すか、残すなら手書きや上限が要るかを決めたか
  • スタッフごとに見せる範囲を分ける必要があるかを決めたか
  • 解約時にデータを持ち出せるか、を必須に入れたか

小規模クリニックが追加で見る点

美容医療を行う小規模クリニックは、サロンの6軸に加えて、診療の記録としての要件が乗ります。自由診療メインのクリニックでカルテを選ぶときは、同意書や施術前後の写真、コース・物販の管理まで含めて見る必要があります。

保険診療と自由診療では、カルテに残すものが変わります。同意の書面、施術前後の比較写真、コースの消化状況。これらをひとつの流れで残せるかは、サロン向けカルテにはない判断軸です。自由診療メインで選ぶ場合の見方は、別記事で軸を分けて整理しています。

関連

自由診療メインの美容クリニックで電子カルテを選ぶ場合は「美容クリニックの自由診療カルテの選び方」で、同意書・施術前後写真・コース管理を軸に整理しています。

自店の段取り ― 条件シートを1枚作る

製品の比較表をいくつも開く前に、自店の条件シートを1枚作ります。これがあると、どの製品を見ても同じものさしで判断できます。

  1. いまの環境を書く:使っている予約システム・会計(POS)・スタッフ数・店舗数を1枚に書き出す。
  2. 記録項目を書く:紙カルテに書いている項目(施術・薬剤・反応・写真・カウンセリング)を全部出す。
  3. 必須3つを決める:6軸から、自店に絶対要る条件を3つ選ぶ。
  4. 候補に同じ質問をする:残った製品に、料金(1年合計)・容量・解約時の持ち出しを同じ言葉で聞く。

選ぶのは道具ですが、決め手は自店の条件です。条件シートを1枚作れば、製品が多くても、見るのは「自店の必須を満たすか」だけになります。選び終えたら、紙からの移し方へ進みます。