製品名から探すと、選べなくなる
「サロン 顧客管理 システム」で検索すると、比較サイトに製品が何十個も並びます。どれも良さそうに見えて、機能の表を見比べるうちに、どれが自店に合うのか分からなくなる。多くのオーナーが、この入口でつまずきます。
製品名から入ると、選べません。先に決めるのは、自店に要る機能のほうです。1人で回す小さなサロンと、スタッフ5人で回数券も物販も扱う店では、要る機能がまったく違います。同じ「顧客管理システム」という名前でも、中身は別物です。自店の条件を先に固めれば、何十個の製品は一気に数個に絞れます。
選ぶ前に、自店の困りごとを書き出す
機能の表を見る前に、いま自分が何に困っているかを言葉にします。困りごとが、そのまま外せない条件になります。
たとえば、次のような形で書き出します。
- 予約の電話対応に追われている ― ネット予約と自動の確認連絡が要る
- 紙カルテを探すのに時間がかかる ― 来店履歴をすぐ呼び出せるカルテが要る
- 回数券の残りが分からず、期限切れでもめた ― 役務消化の管理が要る
- 新規が2回目に来ない ― 来店間隔が空いた人を一覧で出せる機能が要る
困りごとが出そろったら、将来やりたいことも足します。物販を始めたい、複数店舗に増やしたい、といった予定があれば、その機能を持つ製品を選んでおくと、後で乗り換えずに済みます。困りごとと予定の一覧が、選ぶときの物差しになります。
機能が多い製品ほど月額は上がり、覚えることも増えます。自店が使わない機能の分まで払うと、毎月の負担が重くなります。要るものだけを満たす製品が、自店にとっての正解です。
7つの軸で、外せない条件を決める
困りごとを、選ぶときの軸に並べ替えます。サロン向けの製品は、おおむね次の7つの軸で違いが出ます。それぞれで「自店に外せないか」を決めます。
| 軸 | 確認すること | 外せない店の例 |
|---|---|---|
| 予約 | ネット予約、24時間受付、予約サイトとの連携、自動の確認・前日連絡ができるか | 電話対応が多い/予約サイト経由の新規が多い店 |
| カルテ | 来店履歴・施術内容・写真・会話の記録を、お客さまごとに残し、すぐ呼び出せるか | 担当が複数いる/施術の経過を記録したい店 |
| 役務消化 | 回数券・コースの残回数、有効期限、前受金の残高を管理できるか | 回数券・コースを売っている店 |
| 物販 | 店販品の在庫・販売・購入履歴を、施術の会計とまとめて扱えるか | 化粧品やケア用品を売っている店 |
| 分析 | リピート率、来店間隔、客単価、新規・再来の比率を数字で見られるか | 感覚でなく数字で運営を見直したい店 |
| 料金 | 月額、初期費用、店舗数・スタッフ数での加算、決済手数料の有無 | すべての店(後述) |
| データ移行 | いまの名簿・履歴を取り込めるか、代行はあるか、費用はいくらか | すでに名簿や履歴がたまっている店(後述) |
7つすべてを満たす必要はありません。自店の困りごとに当たる軸だけ「外せない」にします。
ここで、各軸を「外せない/あれば便利/不要」に分けます。たとえば1人サロンで物販をしないなら、物販は「不要」です。不要が決まると、製品を比べる手間が減ります。多機能で高い製品を、自分から外せるようになります。
役務消化と物販は、業態で見るところが変わる
7軸のうち、業態でいちばん差が出るのが役務消化と物販です。ここを取り違えると、入れ直しになりやすいため、別に見ます。
回数券・コースを売る店 ― 役務消化を最初に確認
エステや脱毛、まつ毛、回数券を出すネイル・美容室では、役務消化の管理が弱いと、表計算での二重管理が残ります。残り回数や有効期限が会計画面ですぐ分からないと、未消化や期限切れのトラブルにつながります。前受金(先にもらった代金)の残高を、お客さまごとに記録できるかも見ます。役務消化の考え方そのものは、別記事「回数券・コースの消化を仕組みで管理する」で扱っています。
店販をする店 ― 在庫と会計が1つになるか
化粧品やケア用品を売るなら、物販の在庫・販売を施術の会計とまとめて扱えるかを見ます。施術と店販で会計が別だと、誰が何を買ったかの履歴が分かれ、次回の提案に使えません。物販をしない店は、この軸を「不要」にして構いません。
導入のときは予約とカルテが動けば足りて見えます。役務消化や物販の弱さは、回数券の期限が近づく頃や、店販を始めた頃に問題になります。いま使わない機能でも、半年後に使う予定があるなら、選ぶ段階で見ておきます。
料金とデータ移行 ― 契約前に必ず確認する
料金とデータ移行は、機能の比較表に出にくいのに、入れてから効いてくる軸です。契約の前に、こちらから聞きます。
料金 ― 月額だけで判断しない
月額の数字だけ見ると、安く見える製品があります。確認するのは、次の点です。
- 初期費用がかかるか
- スタッフ数や店舗数で月額が上がるか
- ネット予約やメッセージ配信が、別料金(オプション)か
- クレジットや電子マネー決済を使うと、決済手数料が何%か
月額が安くても、要る機能がオプションで積み上がると、合計は逆転します。自店が使う機能を全部入れた合計で比べます。
データ移行 ― 移せるか、誰がやるか、いくらか
すでに名簿や来店履歴がたまっている店は、それを移せるかが切り替えの負担を決めます。聞くのは3つです。来店履歴や名簿を取り込めるか、取り込みは自分でやるか業者が代行するか、費用はいくらか。紙カルテは手入力になる場合が多いため、移す範囲を先に決めます。全部移すか、新規ぶんだけ新システムで始めるか、ここで方針を決めておくと、切り替えの工数を見積もれます。カルテそのものを紙からやめる手順は「サロンのカルテを紙からやめる」で扱っています。
無料期間の使い方 ― 試すべきは混んだ時間帯
候補を2〜3製品に絞ったら、多くの製品にある無料の試用期間で、実際に触ります。試すときに見るのは、機能の有無ではなく、現場で使えるかどうかです。
静かな時間にゆっくり触ると、どれも使えるように見えます。差が出るのは、混んだ時間帯です。会計待ちの列がある中で、予約を取り、カルテを開き、会計し、次回の予約まで取れるか。画面の切り替えが多い、入力の手数が多い製品は、忙しいときに止まります。スタッフがいる店では、自分以外の人にも触ってもらい、説明なしで使えるかを見ます。
① 1人の会計が何タップで終わるか ② 来店履歴が、お客さまの目の前で何秒で出るか ③ サポートに質問して、返事の速さと中身を確かめる。日々の運営は、この3点の積み重ねで決まります。
自店の段取り ― 7軸チェック表に書き込む
製品を見に行く前に、自店の条件を1枚にまとめます。これがあると、営業の説明や機能の多さに流されません。
- 困りごとを書く:いま予約・カルテ・役務消化・物販・分析で困っていることを、思いつくだけ書き出す。
- 将来の予定を足す:物販開始、複数店舗、スタッフ増員など、半年〜1年でやりたいことを書く。
- 7軸を3段階に分ける:予約・カルテ・役務消化・物販・分析・料金・移行を「外せない/あれば/不要」に振り分ける。
- 候補を2〜3に絞る:外せない条件をすべて満たす製品だけを残す。料金は使う機能を全部入れた合計で比べる。
- 混んだ時間に試す:無料期間で、会計の手数・履歴の表示速度・サポートの返事を確かめてから決める。
来店間隔が空いた人や、回数券の残りがある人を自動で一覧にして、再来店の声かけにつなげられる製品もあります。台帳を声かけまでつなげたい場合は、分析と役務消化の軸を「外せない」にして選びます。記録から声かけまでの考え方は「新規をリピートに変える顧客台帳」で扱っています。
- 製品名でなく、自店の困りごとから書き出したか
- 7軸を「外せない/あれば/不要」に分けたか
- 料金を、使う機能の合計で比べたか
- いまの名簿・履歴を移せるか、費用込みで確認したか
- 無料期間に、混んだ時間帯を想定して触ったか
システム選びに正解の1製品はありません。自店の条件を先に決めれば、合う製品は自然に絞れます。決めずに契約して入れ直すより、条件を固める時間を先に取るほうが、結局は早く落ち着きます。